
母音の感触
2021/06/12
母音の感触
幼子を見ていると
その存在丸ごとから発せられる
生き生きとした母音の響きに感動することが多い。
すくなくとも生まれてからの数年間
他者からの見え方などに囚われないところで
躓くことで転び方を学び
転ぶことで起き上がることを学び
ぎこちなさや無様さを経験することで
滑らかさや美しさを学ぶ
私たちはそうして成長してきたはずなのに
その囚われから自由になることが
この再学習の過程で
一番難しいことかもしれない。
その囚われから解き放たれ
格好悪さなど微塵も意識されなくなった先の
目的や意図で括られた世界と
その括りの外との境界に
「あっ!」とか「おっ!」とか
思わず母音が飛び出すような瞬間は
訪れるものなのだと思う。
本との出合い
ふと立ち寄った書店で
眼光鋭い男性の写真がカバーになった本に目がとまった。
その被写体になった方の眼力だけでなく
ファインダー越しに彼を捉えている目にも
意識が引き寄せられるようだった。
それこそ「おっ!」と
新鮮な驚きと期待とで
体腔が上下に引き伸ばされるような感触を覚えながら
手に取ったその本のタイトルに
またひとつ、ちょっと感触の違う
「お~っ」が飛び出す。
なんたって、
およそ哲学をテーマにした本らしからぬタイトルなのだ。
ちょっとフライングして
著者のワタナベアニ氏のNoteを覗かせていただいたところ
『次のツルッパゲ』も出版されるようなお話で
次作にも大いに期待しつつも
まずは「二人の目力」に引き寄せられたこの本を
楽しませていただくとしよう。
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