Baby Steps

ゆっくりと歩む日々の眺めと言の葉

この週末の読書は『ガウディの伝言』

サグラダ・ファミリアの主任彫刻家をなさっている外尾氏によるガウディ入門書だが、職人のレンマ的身体感覚、明快な基準数値と幾何学的なシステム、宇宙を含めた広義の自然の秩序から学ぶガウディの眼差し、建築に込めた祈りに氏の言葉を通じて触れながら、思いを馳せるひとときは、時空を超えてガウディの観ていた世界に旅するかような楽しさがあると同時に、人類への多くの示唆がその時代を超越した仕事には刻まれていることを感じる。

ガウディが弟子たちに残した重要な言葉の一つに、次のようなものがあります。
「人間は何も創造しない。ただ、発見するだけである。新しい作品のために自然の秒月を求める建築家は、神の創造に寄与する。故に独創とは、創造の起源に還ることである」
その自然には、無駄のない関係性が存在しています。食物連鎖にしても、植物の光合成と動物の呼吸の関係にしてもそうですが、あるものの性質(機能)が、他のあるものを存在させるのに役立っている。その関係が巡り回って、結局は自らをも存在させているわけです。
ガウディはその関係性の世界を少しだけ膨らませ、自然から与えられたものを最大限有効に利用しながら、人間の役に立つものをつくろうとしていました。

大局的な言い方をお許しいただければ、近代が、自然と人間とを切り離し、自然を力で征服しようとする精神の上に築かれていった面があるのに対し、ガウディは自然に人間のつくったものを付け加え、自然の機能と美しさをより豊かにすることによって、神の創造に寄与しようとする精神を持っていました。そこに、後世ガウディが理解されにくくなる根本的な原因があるとともに、人類が辿ってきた道の大きな分岐点もあったような気がします。
ガウディの目は
、常に、自然とその創造主である神に向けられていました。科学技術もその方向性で使おうとしていた。この点にこそ、現代に生きる我々がもっとも学ぶべき大切な知恵が含まれているような気がします。たとえば、都市計画でも、ガウディだったらどう考えたかという視点を採り入れることは、非常に有効なことだと思います。

『ガウディの伝言』外尾悦郎 光文社新書

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