
詩というものの力
2020/04/19
長田弘さんの詩を読むと
静寂と共に
心身に透明なスペースが広がる。
詩というものの力を
余白の深みを
感じる。
まるで、今の私たちに
語りかけてくるような一節を
『世界はうつくしいと』という詩集から。
グルダのバッハには何か大切なものがある。
激情でなく、抑制が。憤りでなく、
目には見えないものへの感謝が。
わたしたちは、何ほどの者なのか。
感謝することを忘れてしまった存在なのか。
おおきく息を吐いて、目を閉じる。
どこへもゆけず、何もできずとも、
ただ、透明に、一日を充たして過ごす。
木を見る。
空の遠くを見つめる。
焼酎を啜り、平均律クラヴィーア曲集を聴く。
世界はわたしたちのものではない。
あなたのものでもなければ、他の
誰かのものでもない。バッハのねがった
よい一日以上のものを、わたしはのぞまない。『世界はうつくしいと』長田 弘 みすず書房
「人生の午後のある日」より
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