Baby Steps

ゆっくりと歩む日々の眺めと言の葉

いつも利用しているスタジオも1ヶ月休業となり、当面は仕事も公共交通機関を使わず車での訪問が可能な個人宅への出張のみというスタイル。

情報が錯綜している中、私個人的には児玉龍彦氏のお話が、この事態を捉える上でしっくりくるようには感じているが、いずれにしても起きてしまっている(かもしれない)ことを前に、今自分ができることに最善を尽くしつつ、むしろこの騒動後をどう生きていきたいかを考えるのみだ。

時間ができたおかげで、読書も進むこと(笑)

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今はアントニオ・ダマシオの『進化の意外な順序 感情・意識・創造性と文化の起源』の再読。

このことは、生物学の例を検討することでよりはっきりするだろう。通常の状況下では、体内の循環系は、神経系と争って支配権を得ようとしたりはしない。あるいは、心臓と肺が争って、どちらが重要かを決定しようとしたりなどしない。しかしその種の平和的な関係は、国内の社会的なグループ間の関係や、地理的、政治的統一体内部での各国間の関係には当てはまらない。それどころか、そのような集団は互いに争い合うことが多い。社会集団のあいだに見られる権力を求めての対立や闘争は、不可欠な要素として文化に組み込まれている。この対立は、既存の問題に対するアフェクトに動機づけられた解決策によって引き起こされることもある。
自然界の個々の生体のホメオスタシスを支配する規則に対する明らかな例外は、悪性のがんや、自己免疫疾患などによって引き起こされる深刻な状況に関するものだ。それらは放置すれば、他の生体組織と争うばかりでなく、生体自体を破壊しかねない。
人間の集団は、おのおのの歴史を通じて、またさまざまな地理的環境のもとで、生命活動を調節する高度な文化的手段を発見してきた。人間性の基本的な特徴である、民族性や文化的アイデンティティの多様さは、そのような変化の自然な結果として得られたものであり、あらゆる参加者を豊かにする。とはいえ多様性は、対立の萌芽も宿している。とりわけグローバリゼーションの時代に突入し、異文化間の接触が頻繁になった現代においては、多様性は集団内や集団間の亀裂を深め、敵意を助長し、政治的ガバナンスによる解決策の考案や実施を困難にする。
文化の均質化を強制的に推し進めても、この問題の解決策にはなりそうにない。そもそも実現不可能であり、望ましくもない。均質化だけで社会をより治めやすくすることができるという考えは、生物学的な事実を無視している。同じ民族集団に属していても、アフェクトや気質の点で各人異なるのだから。ジョナサン・ハイトが指摘するように、その種の差異は、特定の政治的ガバナンスや道徳的価値に対する各人の志向に沿って顕現することが多い。この問題に対する唯一妥当で実現可能と思われる解決策は、大小さまざまな差異を抱えながらも、教育という手段を通じて、政治的ガバナンスの根本的な要件をめぐって協調し合える社会を築こうとする、文明的な一大努力を重ねることであろう。

人々のあいだの協調を促すためには、その試みを実践し結果を監視することのできる十分な教育を受けた市民とともに、恩恵が期待される市民に対して説明責任を負うリーダーが必要になる。政治的ガバナンスについて考える際には、生物学は無関係であるかのように思われるかもしれない。
しかし、その見方は正しくない。政治的ガバナンスに必要とされる長期にわたる調停プロセスは、アフェクト、知識、理性、意思決定に関わる生物学的作用に必然的に埋め込まれている。つまり人間は、アフェクト、ならびにそれと理性を調整する装置の内部に必然的にとらわれているのである。この人間の条件から逃れるすべはない。

『進化の意外な順序 感情・意識・創造性と文化の起源』アントニオ・ダマシオ 白揚社
「人間の本性の今」より

陽の光を浴びて、身近な自然を味わいつつ歩く。
住宅街の中のいつもは通らない小径を発見するのもささやかな楽しみ。

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散歩が増えて愛犬は嬉しそう(笑)

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